No.218(2024年8月号)

特集 ◆ シリーズ清水 2024◆ 久能街道「道の駅」構想

観光農業と地域振興(生産・販売)が融合した地域づくり!

新しいスタイルの『道の駅』早期実現を

地域防災と避難地と無人タクシー基地機能を備えた地域密着型の施設

今回のイノセントは読者からいただいた声をもとに、イノセント独自の視点で清水(静岡市)の活性化になるであろう

「道の駅」建設の実現に向けた構想を取り上げ、現在の清水の状況に一石を投じてみたいと思います。

中部横断自動車道の有効利用を再考する

静岡県と山梨県を結ぶ「中部横断自動車道」が開通して3年が経とうとしています。読者のみなさんは既にご利用になったでしょうか?この道路が開通したことで開通前と比べ、両県の交通の便は格段に向上したことは言うまでもありません。その昔、甲斐( 山梨県)と駿河(静岡県)は「甲州往還( 駿州往還)」と呼ばれた道で結ばれていました。そこは人が行き交うだけでも険しい道でしたが両県の物流に大きな役割を果たしてきました。やがてそれは自動車道に変わり国道52号線が往来の大きな役目を担ってきました。この道路は対向1車線でカーブの多い山道ですがこれに対し中部横断自動車道は山を抜けるトンネルを整備したことで約70分もの短縮が可能となりました。中部横断自動車道は両県にとって半世紀かけた事業です。最終目的地は小諸市( 佐久小諸J CT)までの計画であることから、現在の最終地点の中央自動車道・双葉JCT以降の整備が待たれています。この計画本来の全線が開通となれば中央自動車道を介し上信越自動車道で結ばれることで「君は太平洋を見たか、僕は日本海を見たい」のキャッチフレーズが示すように太平洋側と日本海側が約4時間で繋がるようになるのです。この整備されたインフラを有効に活用することが道路の持つポテンシャルを引き出し静岡市に様々な効果を生み出すことができると信じています。開通から3年の節目を迎え、改めて活用の道を考えてみたいと思います。

清水ICから三保、駒越、そして久能、駿河区へ

中部横断自動車道の開通後、静岡県(静岡市)と山梨県の往来は確実に活発化していると感じています。そこで、この道路を利用して来静する山梨県や長野県など他県からの人の流れをいかに市内回遊へ導くかが今の課題の一つだと思います。そこで、現在工事が進められている国道1号静清バイパス〝清水立体〞(横砂〜八坂間を連続立体とし、尾羽地区、東名清水IC、八坂地区にインターチェンジを設置予定)の早期完成に大きな期待がかかります。清水立体の完成を前に清水IC、また新清水ジャンクションからのマイカーの流れを清水港湾道路(清水マリンロード)へ向け、そこから清水バイパス( 国道1 5 0 号線)への流れを作ることで例としてひとつ市内周遊コースが提案できると思います。今やお馴染みとなっている駒越のベイドリーム清水が目印となる三保駒越交差点から三保街道方面へは世界文化遺産に登録された富士山と共に構成資産となった三保松原の風光明媚な海岸線風景は全国に知られていることから、既に観光ルートとして確立されています。しかし、ここで課題のひとつとして挙げられるのが〝滞在時間が短いこと〞です。東海大学海洋科学博物館(通称、三保の水族館)が一般向けの有料公開を終了した今( 現在は予約制の

無料公開を実施。詳しくはホームページを参照下さい) 滞在時間を稼げる大型施設がほとんどないのが現状です。さらに三保園ホテルに代表された宿泊施設も減少したことで宿泊客も激減してしまいました。海水浴や海遊びが楽しめるサマーシーズンを除いて観光客の滞在時間はこれらの施設が営業していた頃に比べ短くなっているのが現実です。現在、三保内浜海岸で体験型観光を実践し誘客に成果を上げている施設もありますが、この事業を後押しし、さらに賑わいを創出、三保から駒越・久能一帯に向け経済の波及と活性化に貢献できるナニかが今必要とされているのです。

新しいスタイルの「道の駅」構想を実現へ

そこで、以前より要望 の声や待望論として挙が っているのが150号線 ( 久能街道) 沿いへの 「道の駅」建設構想で す。現在ここではバイパ スの四車線化の工事が進 められていることもあ り、今後利便性の高い道 路へと生まれ変わる大き なチャンスが訪れようと しています。  一般的に道の駅はその 地域の地場産品が揃うこ とに魅力と人気がありま すが、150号線沿いで 同様のことを考えた場合 にその要件を充分に果た せる可能性が高いのでは ないかと思います。  三保半島ではメロンや フルーツトマト、徳川家 康公が好んだと言われる 折戸なす等、駒越・久能 からは苺や枝豆、葉しょ うがと言った市内でよく 知られた自慢の美味しい 農作物が揃う他、久能海 岸からは獲れたてのシラ スも揚がります。このよ うにこの地を代表する地 場生鮮品は大きな魅力と 言えるでしょう。  そして、この道の駅整 備の適地の候補として挙 げられるのが駒越地区に ある現在は使われていな い静岡県果樹研究センタ ー跡地です。近年開通し た駒越西バイパス交差点 の近くに位置し、東西南 北へのアクセスの中間拠 点として交通の便が良い のが魅力です。  また、新しく道の駅を 整備するならば、既存の 他施設との差別化が必要 不可欠と言えます。そこ で新しいスタイルを取り 入れることが重要と思い ます。例えばそれは地域 密着型であり、地元の人 も気軽に利用できる地域 貢献をも考慮した機能・ 仕様です。  その一つは防災基地と しての機能です。  発生が懸念される大き な地震や様々な自然災害 に対し、道の駅でありな がら災害発生時に避難地 として機能するばかり か、救援物資の受け入れ 場所としても機能するこ と、また平時は災害対応 備品の備蓄場所とするこ とで、施設の管理運営に 地元の人が関わることが 必要となり雇用も創出す る仕組みです。  もう一つ、無人タクシ ーの発着基地としての機 能の実現です。道の駅を 基点に西へ蛇塚グラン ド、久能山東照宮入り 口、リバティリゾート久 能山をつなぎ定期運行す れば観光客はもちろんの こと地域住民の足として 活用が可能です。  また農園(ハウス)を 繋げばいちご狩り期間に は移動手段としての活用 も見込めると思います。  さらに、三保方面への 運行も視野に入れれば活 用の幅は大きく広がる可 能性を秘めていると思い ます。  現在「道の駅」の話は 構想ではありますが、な んとか実現に向けた話が 動き出すことを願ってい ます。

「久能・石垣いちご」 ブランドの確立と継承

駒越・久能と言えば忘れてはならないのが「いちご」です。明治時代に久能山東照宮の宮司さんがアメリカから苺の苗を持ち帰ったことから始まった久能の苺栽培は、久能山が作り出した南向きの陽当たりの良い斜面と、静岡特有の一年を通した温暖な気候に恵まれたことで全国でも珍しい、この地ならではの栽培方法が生み出されました。それが「石垣栽培」すなわち「石垣いちご」です。かつて市場出荷を主な目的としていた久能ですが、今から約60年程前にクリスマスの出荷盛期を終えた時期に〝石垣いちご〞と〝観光〞を結び付け「石垣いちご狩り」がスタートしました。当時、酸味が強かった苺にカップに入れた練乳をサービスすることも功を奏し大好評となり「石垣いちご狩り」は年末からゴールデンウィークまで楽しめるレジャーとして定着しました。そんな中、苺農家を営む萩原章弘さんが「そのまま食べられる苺」を作りたいと言う強い想いのもと、大変な努力と苦労そして長い年月をかけて生み出したのが静岡ではおなじみのブランド苺「章姫」です。この苺はその甘さゆえ鮮度が命なため、日持ちが難しいことから久能でしか味わえない品種といっても過言ではない逸品です。このように〝ここにしかない〞を武器に売りにしてきた久能の苺農家ですが生産競争の激化、重労働に対する相応の対価等、全国の農家が抱える悩みと同様の後継者不足に直面しています。120年にも及ぶ歴史ある苺を今改めて「久能・石垣いちご」としてブランド化し全国へPR、さらに章姫に次ぐ新しい苺品種の開発への取組、そして道の駅の整備こそ、久能の苺にとって将来の担い手となるものと期待して夢を託したいと思います。