No.211(2023年6月号)

特  集 ◆ シリーズ清水 2023◆清水港から始まる賑わい復活

賑わいを取り戻せ

清水都心ウォーターフロント地区

清水港江尻地区 ・ 清水駅東口地区 ・ 清水港日の出地区

世界から人々の賑わいを奪い取った新型コロナウィルス感染症。

日本では5月にやっと5類に移行したことで

少しずつ人々に笑顔が戻ってきました。

停滞していた経済を前進させるためには

〝賑わい創出〞が何よりも大事です。

今こそ賑わいを取り戻す時がやって来ました。

 

新型コロナ感染症5類へ溢れる人々 賑わい復活

 5月8日に新型コロナウィルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症となりました。日本での発生から約3 年、様々な事がイレギュラーに過ぎていった世の中が今、まん延以前に戻ろうとしています。

 しかし、大切なのは〝新型コロナウィルス感染症〞が無くなった訳ではないと言うことです。「ウィズ・コロナ」と言う言葉が適切かどうかは分かりませんが、コロナ他5類に指定されている感染症と同様にこれからも予防をしつつ、3年前の生活を少しずつ取り戻して行くことが大切なことだと思います。

 5類移行直前にも関わらず5月の大型連休ではこれまでの我慢から解放されたように全国各地の有名観光地やイベントが多くの人出で賑わいました。静岡市でも同様に賑わいが戻りつつありますが、これは新しい賑わい創出への幕開けとなるのでしょうか。

 今回はイノセントがテーマとして追い続けている「清水港」に目を向けて〝これからの賑わい〞を考えてみたいと思います。

 

清水港の賑わいの中心清水都心WF地区

 今、清水港の賑わいを考える時、真っ先に目を向けたいのが「清水都心ウォーターフロント(WF)地区」です。

 「清水都心ウォーターフロント(WF)地区」とは、JR清水駅周辺から清水港の江尻地区と日の出地区及び両地区を結ぶ軸の一帯を指し、県と市が、交流人口の拡大を目指した〝みなとまちづくり〞を進めることを共通の目標とし活性化に取り組んでいる地区です。

 現在、日の出地区では海洋文化施設の整備へ向けた計画が着々と進んでいる他、日の出埠頭と言えば外国客船が寄港する場所として市民に知られるようになり、商業施設エスパルスドリーム・プラザは港の賑わいの象徴として定着、現在は本館に隣接する新館の建設工事が進んでおり今年秋のオープン(予定)が待たれ

ています。

 日の出地区と江尻地区をつなぐ交通手段として親しまれているのは水上バスですが、市はこれに加え、さらに利便良く両地区を往来する交通手段として次世代モビリティーの導入検討を始めました。旧国鉄「清水港線」跡地で現在は自転車と歩行者が利用する「自歩道」の活用を促進する目的があると思われます。

 江尻地区と言えば市民の台所として親しまれ、今では県内外から多くの人が訪れる「河岸の市」が有名。後の記事で詳しく触れますが、現在この地区で駿河湾フェリーターミナルの移転に向けた整備が進んでいます。

 まさに「清水都心ウォーターフロント地区」は目が離せない話題に溢れていると思います。

 

駿河湾フェリーターミナル 移転で変わる江尻地区

 まず清水都心ウォーターフロント地区内において今ホットな話題が多いJR清水駅周辺に目を向けて見ましょう。

 ひとつ目は江尻地区です。今ここでは令和7年の供用開始を目指し駿河湾フェリーの新しいターミナルの新設に向けた整備が進んでいます。

 現在、駿河湾フェリーは日の出ふ頭と伊豆・土肥港を往復していますが、この発着場(フェリーターミナル)が河岸の市のある江尻地区に移転することで新しい人の流れが創られるのではないかと期待が膨らみます。

 気になる新しいターミナルの魅力のひとつはJR清水駅と直結を予定しており駅から徒歩で利用が可能になることです。

 これが実現すれば、バス・JRなど公共交通機関を利用して清水駅へ、そこから自由通路を介してそのままフェリー乗り場へと容易に移動ができ、フェリーの利用促進へ繋がると思います。さらにそこに新しい人の流れが生まれるのではないかと期待が高まります。 これにより県外からの利用客増加が見込めることが考えられ、さらには西口商店街等や駅西ロータリー周辺の活性化にも繋がる可能性があると思います。

 また、まだ夢の話かも知れませんが、もしも次世代モビリティが実現すれば日の出地区と江尻地区往来の利便性が向上し、さらにフェリーの利用客増が望めるばかりでなく、誘客のやり方次第では客船で来した外国人観光客に対してもフェリーの利用を薦めることも可能になるのではないかと想像が広がります。

 江尻にフェリーが着くことは観光面だけでなく江尻地区の清水マリンロードを活用した交通ハブ機能の向上にも繋がるため物流の活性化や、周辺地区としては、災害時におけるフェリーの活用にも検討の余地は広がり、現在、駅東に建設が進められている総合病院との連携も視野に入れることもできると思います。伊豆方面からも充実した医療を求めての来院される需要も考えられるのではないでしょうか。

 このように新フェリーターミナルが稼働し、軌道に乗ればきっと新らしい人の流れと賑わいを創出してくれるのではないかと期待が高まります。

 

どうなる清水駅東地区 夢は大きく

 もう一つ、清水駅東地区おいて今、大きな話題となっているのが、ここに新しいサッカースタジアムが誕生したらいいなと言う話です。

 これは低迷する清水の経済を再び盛り上げ「サッカー王国・清水」の復権にも繋げようと市民の有志により組織されている「新サッカースタジアムを考える会」が声を上げている活動です。

 この活動の目的で最も重要なことは彼らは単に新しいサッカースタジアムを誕生させることで「新しいまちづくり」ができることを目指しているところです。

 新しいサッカースタジアムの出現は低迷を続ける清水の経済の復活への核となり、延いては静岡市のシンボルとなることで、静岡市が日本中、また世界から注目される「新しいまち」へ変貌を遂げるための起爆剤とするのが目的です。その周辺にコンベンションホールや、ホテル、客船寄港時に下船された観光客が一度に食事が可能となる規模のフードコート、行政機能を持った施設、大規模なショッピングモールなどが出現することで、まさに、〝スタジアムシティ〞の名にふさわしいまちづくりが形成されることが会の目的であり、スタジアムを中心に夢が膨らみます。

 併せて駅西側への導線を新設、交通インフラの整備が進むことで駅周辺から広域へと活性化につながると思います。

 またスタジアムの形状を例えばオーストラリアのオペラハウスのように印象的なつくりにすれば、清水港のシンボル的存在にもなるのではないでしょうか。

 また災害時に緊急対応可能な拠点機能や避難地としての機能を合わせ持たせることで公共性にも優れた建造物になり得ると思います。

 しかし、この構想には多くの課題、問題などが山ほどあり、現時点では〝夢話〞と切り捨てられるかも知れません。

 それでもJR清水駅東地区は夢が描ける魅力あふれる地区と言えると思います。

帰ってきたクルーズ客船 今後の動向に期待

 清水港における賑わいの象徴と言えるのが外国客船の寄港ではないでしょうか。雪を冠した富士山を背景に青く輝く駿河湾海上に映えるクルーズ船の姿は乗客のみならず、それを迎える我々市民をも魅了し、船から降り立つ外国人観光客はまさに港の賑わいそのものと言えると思います。

 しかし、3年前、横浜港に寄港した国際クルーズ船で発生した新型コロナウィルスの集団感染発生は客船クルーズに大きな影を落とし、国際クルーズ船の運航は厳しい状況に陥りました。この間、清水港において特に残念だったのは、クイーン・エリザベス号の寄港が実現できなかったことです。これは清水港への客船寄港促進の立役者である〝清水港客船誘致委員会〞が2020 年( 令和2)に設立30周年を迎えることを記念しての寄港だったことから多くの人が肩を落としました。

 それでも、2021年(令和3)には日本を代表する客船「にっぽん丸」が55回目の寄港を果すなど、少しずつ明るい話題が聞かれ、ついに今年の3月1日には中断されていた外国客船クルーズの再開第1号として客船「アマデア」が日本で一番最初の寄港地として清水港に入港、この喜ばしいニュースに、清水港が、いや日本中が湧いたのでした。

 この後、堰を切ったように4月だけで14隻もの客船が寄港、港は賑わいました。

 港に足を運び再開された客船寄港時に上陸した乗船客の動向に目を向けるとコロナ前と比べ少し変化が見られるように思いました。

 船から下りた外国人観光客の定番と言えば大型バスによるツアーですが、これに加え、自身で歩いて、また公共交通機関を利用し自ら移動しての散策や、レンタサイクルを利用して市内観光を楽しむ姿がコロナ前以上に多く見られるようになった気がします。これは体験型観光への人気が高まっていることと同じように感じます。

 また、インバウンドだけでなく客船を見に訪れる日本人が創り出す賑わいも見逃せないと思いました。この観客をいかに周辺へ波及させるかも賑わい拡大への大きなポイントになるかと思います。ここで課題となるのは日本人の来場は客船の寄港スケジュールに左右される要素が大きいということ。土・日・祝日の人出に比べ平日では人出が少ないといった点をどう解決するかが課題のひとつだと思いました。

 とはいえ、今年度はまだまだ多くの外国客船が寄港を予定、今後も増えてゆく可能性を秘めており、このチャンスを官民一体となった取り組みで盛り上げてゆくことが大切なのではと思いました。

 

イノセントから ひと言

 国により新型コロナウィルス感染症が5類に移行されたことで、久しぶりにやっと明るい話ができるようなったかと思います。まだ全て安心して元通り、とは行かないとは思いますが、このコロナ禍で得た経験を活かし以前とは違った〝新しい人の賑わい〞が創出されるのではないかという期待感が高まっています。

 期待感は高まるものではなく高めるものではないでしょうか。

 市民一人ひとりが小さなことでも協力し合って創り出すことが大切だと思います。