No.220(2024年12月号)

特集 ◆ シリーズ清水 2024◆ JCHO清水さくら病院

新たな地・環境・設備で地域医療の拡充と充実に期待

2025年3月1日

JR清水駅東口にJCHO清水さくら病院が新築開院いたします。

長い間、清水区桜が丘町の地で親しまれてきたJCHO桜ヶ丘病院が2025年3月に

JR清水駅東口エリアに移転し「JCHO清水さくら病院」として新築開院します。

新しい病院の開院に向け市民からは期待の声が高まる一方で、病院側では

長期に渡る現状維持と新築移転に向け並々ならぬ準備が進められてきました。

今改めて病院の歴史と移転への想いを振り返り、新しい病院の魅力についてお伝えしたいと思います。

清水の地に70年以上。桜ヶ丘病院の歴史

戦後間もない1948年(昭23)に地元企業の寮を国費で買収し同年6月に財団法人静岡県社会保険協会の経営により開設されたのが桜ヶ丘病院のはじまりです。当時の病床はわずか28床の規模だったそうです。その後徐々に病床等を増やし1 9 5 8 年( 昭33)に新築5ヶ年工事に着工、翌年には経営が社団法人全国社会保険協会連合会に移管、1964年(昭39)に新築工事が完了しほぼ現在の姿になりました。その後も設備等の充実を図りつつ1979年(昭54)に社会保険桜ヶ丘病院に名称を変更、さらに1 9 8 4 年(昭59)には健康管理センターが新築される等、桜が丘を象徴する病院として地域と共に歩み、親しまれてきました。2014年(平26)には独立行政法人医療機能維持推進機構が発足し直営の病院となったことで現在は正式名称「独立行政法人医療機能維持推進機構桜ヶ丘病院」として実質病床数148床を有し静岡市保健所が所管する地域医療の一翼を担っています。

聞いたことはあるけど…JCHOって何?

「独立行政法人地域医療機能推進機構」とは何とも難しく聞き慣れない名称が出てきましたが、これはいったいどんなものでしょう。英語名称を「J a p a nCommunity Health careOrganization 」と表記し、「JCHO」(ジェイコー)の略称で呼ばれているためこれなら見聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか。かつての社会保険庁が所管していた独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)が傘下の団体に運営を委託してきた社会保険病院は2014年(平26)に改組され発足したJCHOが直接運営する施設となりました。JCHOは5事業(救急医療・災害医療・へき地医療・周産期医療・小児医療) 、5 疾病( がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)、リハビリテーション、その他地域において必要とされる医療および介護を提供する機能の確保を図り、公衆衛生の向上や住民福祉の増進等に寄与することを目的としている機構です。(以下文章内において病院名に〝JCHO〞表記を省略)

なんとか漕ぎ着けた念願の新築移転事業

話を桜ヶ丘病院に戻します。現院長の森典子先生にお話を伺いました。森先生は長年静岡県立総合病院に勤務された後に桜ヶ丘病院に赴任、2022年のJCHO移管時に院長を拝命されたとの事で、専門は腎臓内科だそうです。「今時の病院としてはありえない状況にあるのが当院です。」と森院長。開設時まで遡れば76年、新築5ヶ年工事の完成から考えても60年が経っています。地域と共に歩んだ大切な歴史と言えば聞こえは良いですが、建物にとっては厳しい経年です。一般的に建物はおおよそ30年を目処に建て替えの検討をするもの。特に昭和初・中期の建物は現在の耐震基準に合わないケースが多く、桜ヶ丘病院も例外ではありません。最も顕著なのが配管や電気系統の老朽化です。また、手狭となった院内では感染予防やプライバシーの確保が難しい等といった問題が山積となっているとの事でした。ただ、建て替えの計画自体がなかったわけではなく、30年も前からその話は持ち上がっていました。しかし、そのための財力が乏しく、特に国からの補助を受けていないJCHOになって以降はそれまで以上に財政が厳しく、決断ができないまま月日だけが過ぎてしまったのが実情だったそうです。そこで前院長の頃から財政の立て直しに向け本格的に着手し動き出したとのことです。これまで以上に地域に根ざした医療を目指すため地域医療連携推進法人ふじのくに社会健康医療連合に参加し、地方独立行政法人静岡県立病院機構(県立総合病院・県立こころの医療センター・県立こども病院)、静岡社会健康医学大学院大学との連携を強化、救急患者の受け入れを可能な限り実施した他、地域からの紹介患者の積極的な受け入れも行ったそうです。また、清水は特に高齢者関連の施設や訪問看護が多いことから、入所者の診察も行い、退院調整のスタッフを増強して対応、ベッド循環の効率化を図るなどの努力を重ねる等により、財政の状況が改善、上向きの兆しが見えたことでやっとのことで念願の新築・移転の決断に踏み切れたとの事です。

地域が期待する新病院の注目ポイント

「新しい病院はJR清水駅東口地区に位置し駅と直結することによる利便性の高さに加え、北に富士山、東に清水港を眺める素晴らしいロケーションのもと患者さんを迎えることができます。」と話が始まると森院長先生の表情は明るくなりました。期待の新病院は名称「JCOH清水さくら病院」としJR清水駅東口ロータリーのすぐ北側に建設が進んでいます。(2024年11月現在)2022年(令4)年に起工式が行われ、翌年3月に着工、2025年3月1日の開院が決まっています。完成と同時に駅南側にある静岡市文化会館マリナートや東側の河岸の市をつないでいるペデストリアンデッキ(高架歩道)が病院側へ延長されるため駅からそのまま徒歩で病院へ向かうことができるようになります。また桜ヶ丘病院が抱えていた駐車場に対する課題についても病院施設を2階より上に整備することで1階部分を全て駐車場とし、周辺にも駐車場エリアの確保を予定しているため大幅に改善することになるそうです。新築により院内は広くなり、病院を訪れる方の利便性は向上し、医師・職員にとっても働き良い環境になることは当然のことと思いますが、その上でさらに院長先生から「健康管理センターを〝mirai(みらい)〞と名付け、健康診断の拡充と充実に努めていきますので、ぜひご利用ください。」と声が弾みました。これまでも桜ヶ丘病院では健康管理・健康診断に力を入れてきましたが新しい施設では最新鋭のMRI装置が導入され、特に女性にとって苦痛を伴う乳がん検診に安心、安全で痛くないない、それでいてがんの発見率の高い〝無痛MRI乳がん検診「ドゥイブス法」〞や全ての人の検診に対応する全身MRI検査「ドゥイブス法」等様々な最新検査に対応するとのことなので、これまで以上に高度な検査に安心感と期待が高まります。

「病院のお引っ越し」と清水再生への希望

新病院開院の前に待ち受けるのは大規模な引っ越しです。引っ越しだからと言って病院は診療を止めるわけにはいきません。それは実際の医療現場を知らない私たちとっては想像を絶する大がかりな作業が行われるのではないかと思います。Y o u T u b e で「病院 引っ越し」と検索すれば関連動画を観ることができますので興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょう。きっとその様子に驚かされることになると思います。最後に、新築移転事業パンフレットの挨拶に「この病院の将来を担う使命を受けて院長となりました。」と綴っている森院長先生なら今後の地域医療の充実が確実に図られていくことは間違いないと感じました。清水さくら病院の開院後、河岸の市の新築リニューアルや駿河湾フェリー発着所の江尻港への移転、そして日の出地区では静岡市海洋・地球総合ミュージアム(仮称)の建設が進む予定です。ことフェリーにおいては伊豆方面から病院を利用する方の来清も考えられます。また駅東口エリアに新しいサッカースタジアムの建設を実現しようと願う市民活動も活発になっています。この清水港ウォーターフロントを核にした将来へ向けて清水の街の再生、コンパクトシティ構想が進んでいくことにも開院と併せて期待をしたいと思います。