地元商店街お店の対応は!?
世界的なコロナ感染規制が緩和され、ここ清水では大型豪華客船の寄港が再開、今年は100隻を超える勢いです。
一度に数千人が清水へ降り立つ寄港ではインバウンドに大きな期待が寄せられます。今回のイノセントはこのチャンスを活かすべく奮闘、頑張る地元の清水駅前銀座商店と英語ガイドの活動を紹介します。
菊幸刃物店 (店主 大瀧一朗さん)
「日本の刃物は〝ワールド・ナンバー・ワン〞と言って認められているから人気があるんだよ。」と笑顔で答えていただいたのは菊幸刃物店のご主人、大瀧さんです。中でも美しいダマスカス模様が日本刀をイメージさせる多層鋼の包丁は人気の商品の一つです。他にも寿司ブームの影響から出刃包丁や柳刃包丁も人気があり、海外では高い値がつくため日本で購入される方が多いそうです。
外国人相手の商売には言葉のやり取りの上で不安があるかと思いますが今はスマホの翻訳アプリがあることと「ここではALTの方々が積極的に協力してくれているから助かっているよ。」とのこと。A L T とはAssistant LanguageTeacherの略で市内の小中高校に勤務する外国語を母国語とする外国語指導助手の先生方です。商店街では言語の対応はもちろんのこと税関通過可能な物品を調べてくれるなど積極的な活動のおかげで商店は大変助かっているそうです。これからもALTのみなさんと仲の良い関係を築きながら、協力を得つつ日本の刃物に興味を持っていただく接客を続けていきたいとご主人。
また菊幸では商品をお買い上げ頂いた外国人のお客様に対して取引先から提供いただいたバッグや竹製のうちわをサービスしています。特にうちわは日本の風を感じることから大変喜ばれるそうです。
お店では持ち込みいただいた刃物をその場で〝お研ぎ〞しますので、地元のみなさんもぜひご自宅の包丁をお持にちなってご利用ください。
株式会社 次郎長屋 (店主 西ヶ谷建志さん)
「もしかすると、味噌汁は(船内食等で)飲んだ経験がおありになるかと思うので意外とすんなりと受け入れていただけてます。」と次郎長屋の若女将。店頭に並ぶ味噌樽や実演している鰹節削りに興味をそそられて立ち寄る外国人観光客が後を絶ちません。
たくさんの乗船客が来清すると大型客船が寄港する際には店頭に屋台を題して出迎え、お出汁だけのものとそれに味噌を加えた物をご用意し飲み比べ試飲サービスを行っています。味噌汁は〝みそスープ〞として既に知られているため好評なのは納得ですが、意外にもシンプルな出汁も受け入れられるとのことには驚きです。
さらに驚くのが乾物も人気があることです。お馴染みの〝どんこ〞や〝昆布(出汁用)〞といったもの、それも品質重視でハイクオリティーなものほど良く売れるのだそうです。
普段は静かな商店街ですが大型客船が寄港する時は市が手配したシャトルバスが運行されることもあって多くの外国人が往来するようになり、普段からお店を利用するお客さんからは「外国の方が増えたね。」なんて声が聞かれるようになったそうです。
お店では外国人向けにウェブサイトを用意して案内に活用していますが、もちろん日本人向けのサイトも充実しています。ぜひ一度ご覧になって見てください。
有限会社 栗田屋本店 (店主 栗田丈資さん)
「店内には外国人観光客に喜んでいただけるような工夫を随所に施しています。」と話すのは有限会社栗田屋本店の女将さんです。
富士山の絵柄が入った陶器など外国人が好みそうな商品を揃えるのはもちろんのこと店内には日本語と英語が併記された商品説明があちこち設置されてる他、陶器の産地を示した地図は日本各地の陶器に興味がある外国人に大変好評なのだそうです。
特別に人気の商品があるかとお聞きしたところ、お箸、お茶碗、マグカップ、徳利やお猪口など様々な商品をお買い求めていただくそう。店内は日本を感じるものばかりなのできっと迷いながらお買い物をされるのではないでしょうか。
中には日本人ですら手の出ない宮内庁御用達の窯元、深川製磁の陶器セットや、高価な壺なども買われるそうで、金額は関係なく気に入ったものを購入されるそう。さすが豪華客船の乗船客とうなずいてしまいます。
客船寄港時には持ち帰りが容易な漆器などを中心に集めた外国人向けのコーナーも展開するなどきめ細やかな対応を心がけている栗田屋本店さんですが、陶器の他、染め物などの企画展・即売も行っていますので地元のみなさんも足を運んでみてはいかがでしょう。
きもの 丸京本店 (店主 田辺惠章さん)
外国人に人気の日本文化のひとつと言えばやはり着物ではないでしょうか。
きもの丸京本店さんでは〝子ども用甚平〞が普段から置いてあるものの中で良く売れるだそうです。もちろん着物や浴衣にも人気がありますが、体格が大きな外人にはなかなか対応できないのが現状だそうです。その代わりに扇子や掛け軸風の和柄のタペストリー、今ならアカデミー賞で海外でも話題となった「ゴジラ」柄のTシャツといったものに人気があるそうです。
呉服屋と言うと日本人からしてみるとちょっと敷居が高いお店の感じがしますが、外国人は気軽にお店を訪れるそうで「開店前でシャッターが半開き状態でもお構いなしにお店の中に入ってくるのは外人さんだけだね。」と笑うご主人。それでも普段は静かな店内が賑やかになるのは嬉しいとのことでした。
しかし「日本人の感覚では考えられないものを買っていかれるので、予想がつかないんです。」と対応に苦慮する時もあるとか。
昔と比べ今は商店街だけでなく清水に呉服屋が少なくなってしまったことから本来の呉服屋業はなくしたくないとの想いからお土産店のようにはしたくないと言います。それでも外国人観光客のお客様を大切にしつつ、地元のお客様も大事にこれからも愛されるお店を続けていきたい、と奥さんが語ってくれました。
中澤園茶舗 (店主 中澤利雄さん)
静岡・清水の名産でお土産にピッタリと言えば日本茶ではないでしょうか。老舗お茶屋の中澤園茶舗のご主人も外国人観光客相手の接客に奮闘しています。
例えば商店街の案内マップの原稿を作成しALTのみなさんに翻訳の協力を仰いで英字マップを作成し商店街散策に役立てています。
「日本人の翻訳とネイティブではちょっとしたニュアンスとかが違うんだよね。だからALTのみなさんにはお世話になっています。」とご主人の中澤さん。ここでもALTの協力が心強い後押しとなっています。
客船の外国人が立ち寄った際には店頭にちょっとしたお茶席を用意してお抹茶体験のサービスを行っているそうです。
抹茶の点て方のお手本を途中まで見せた後は抹茶茶碗と茶せんを手渡して続きを体験してもらうと大変喜ばれるのだそうです。今〝体験型〞と呼ばれ人気がある観光スタイルです。自分で点てた抹茶は思い出の味になりそうですね。取材の当日は店主の話に耳を傾けながら緑茶を味わう外人さんの姿がありました。中にはお茶を味わった後に茶器を購入される方もいるそうです日本人にとって馴染みの深い日本茶ですが、最近は自宅の急須で緑茶を入れる家庭が減ってきていると聞きます。我々もたまにはお茶屋さんを覗いてみるのもいいですね。
清水区観光ボランディアガイドの会(SVG)
外国人観光客が名所等に立ち寄った際に重要な役割を果たし活躍をするのがガイドです。清水港において外国客船寄港時に港周辺の観光スポットでボランティアのガイドを行っているのが「清水区観光ボランティアガイドの会」(SVG)の皆さんです。会の客船ガイド部会の多々良資朗さんと望月誠一郎さんにお話をうかがいました。その名のとおり、所属するみなさんはボランティアで活動されており、年間22隻の客船に対してガイド活動をされており、日の出埠頭から近い観光スポットであるフェルケール博物館、船宿末廣、妙慶寺、次郎長生家、美濃輪稲荷神社の5ヶ所で定点ガイドを行っています。
傍から見ると外国人観光客は皆同じに見えますが一般の(外国人)観光客と客船乗船観光客にはちょっとした違いがあるそうです。一般的な観光客は目的が比較的明確で下調べをして目的地へ向かうのに対し、各所を周遊する客船観光客は日本(清水)だけが目的地ではないため観光スポットめぐりはガイド頼みの部分があるそうです。このようなことからガイドには解説のテクニックが求められることもあり苦労する部分もあるそうですが。SVGで作は成した英語のリーフレットを活
用しながら上手にガイドをしているそうです。そして「何よりもガイド自身が楽しく活動していることが良いところ。」と望月さん。「それに一番は(見知らぬ人に声を掛けて会話を始める)経験を重ねて度胸がつくこと。なんと言っても相手は外国人ですからね。」と多々良さん。
客船の寄港は休日とは限らないためガイド人員確保には苦労されることもあるそうです。ご興味のある方は会に参加して見てはいかがでしょう。